せとうち心臓CT・MR勉強会


第1回 せとうち心臓MR勉強会

平成19年9月15日(土) えひめ共済会館
せとうち心臓MR勉強会 バイエル薬品株式会社
代表世話人 愛媛県立今治病院 循環器科 松岡 宏
当番世話人 愛媛大学医学部附属病院 放射線科 東野 博

当番世話人挨拶
   心臓MRは国内外のMR関連学会では演題数の多くを占める重要な領域であり、虚血や生存能の評価にはMRが最も良いと記載された教科書も出て参りました。しかしならが一方ではMRの日常診療において心臓MRの件数は1%にも満たないとの報告もあります。残念ながら装置のアプリケーションの差が大きくなってきたことも事実です。
   そこで本会は、心臓MRの先進的な研究や議論を行うだけでなく、基本的な勉強を通して検査の普及を図ることを最も重要な課題として掲げて、愛媛県立今治病院循環器科の松岡宏先生らの発案で設立されました。
   今回は一般演題に加えて松岡宏先生に心臓MRの黎明期の話題をご講演いただき、三重大学からのライブデモで実際の検査をご説明いただき、世界のリーダー佐久間肇先生にご講演をいただきます。
   本会がご参加の皆さまの明日からの業務に少しでもお役にたてますよう世話人一同努力いたしますので今後ともご指導いただければ幸いに存じます。

一般演題 座長 愛媛大学医学部附属病院 放射線科 東野 博

演題1 3.0T MRI装置を用いたcine-tagging MRIによる陳旧性心筋梗塞症例の左室局所壁運動の定量評価の試み 愛媛大学大学院 生体画像応用医学 井上 祐馬 先生 他
   陳旧性心筋梗塞症例に対し、3.0T MRIを用いてcine-tagging MRIを施行した。HARP法をbaseとした解析ソフトウェアを用いてstrainを計測した。梗塞部位では正常部と比較し、strainの低下が認められた。3.0T MRIによるcine-tagging MRIは左室局所壁運動評価に有用と思われた。

演題2 MRI室対応輸液システムを用いた、当院でのATP負荷心臓MRI検査の実際 市立宇和島病院 循環器内科 石橋 堅 先生 他
   当院では症例数が少ないため、主に総合的心臓MRI検査を行う。昨年6月よりMRI室対応輸液システムを導入し、以後37例 (50例中)にATP負荷検査を施行している。従来のマニュアル法と比し、正確でかつ迅速に検査が行えるようになった。当院での心臓MRI検査の方法と実際の症例を提示する。

演題3 剖検にて心臓造影MRIの造影部位にアミロイド蛋白の沈着と心筋線維化を認めた全身性アミロイドーシスの1例 愛媛県立中央病院 循環器科 松中 豪 先生 他
   心アミロイドーシスは不溶性の線維状蛋白であるアミロイドが心筋組織に沈着し、機能障害を来す予後不良の疾患である。多発性骨髄腫による全身性アミロイドーシスの女性に対して心臓造影MRIを施行し、造影効果を認め心アミロイドーシスの合併が疑われた。心アミロイドーシスにおける造影効果は約70%に認められ、その機序としてはアミロイド蛋白の沈着により心筋間質容積が増加するためと考えられている。自宅にて突然死され病理解剖にて組織学的検討を行ったところ、MRIでの造影部位に一致してアミロイド沈着のみならず高度の心筋線維化を認めた。心アミロイドーシスにおけるMRIの造影効果に、アミロイド蛋白の沈着のみならず心筋線維化も関与している可能性が示唆された。

記念講演 座長 済生会松山病院 循環器科 渡辺 浩毅
創世記の循環器MRI~20年前でもここまで診えました~
愛媛県立今治病院 循環器科 松岡 宏 先生
    約20年前、MRIが開発・発売され、脳神経外科領域でMRIが脚光を浴び始められた頃は、心臓の関するMRIはマニアックな世界として臨床的にはほとんど受け入れられなかった。
    ちょうどその頃、私は、当時の国府達郎教授から、松山市内の某脳外科中心の私立病院に循環科医師として勤務を命じられた。そこで待っていたのは、愛媛県で最初に導入されたMRIと三木均先生 (現愛媛大学大学院医学研究科・生体画像応用医学分野准教授)であった。脳外科の脳外科による脳外科のための病院におけるMRI検査の中で、循環器疾患に対してMRIを試行錯誤で始めた。当時のMRIは0.5テスラであり、脳外科の検査の合間を縫って、心臓におけるMRIの多断面撮影の有用性、シネMRIによる弁逆流や大動脈瘤の診断について検討した。
    大学に帰ってからは、放射線科の1.5テスラのMRIを使わせてもらって、当時に新しく開発されたGd-DTPA・MRI造影剤を使って、肥大型心筋症や二次性心筋症等における心筋障害の造影効果について検討した。学会や論文発表で、当時の愛媛大学は結構MRIで有名であったと自負している。
    1990年代初頭のMRI について、私の某私立病院から大学病院時代を振り返って、私は思い出に浸り、皆様方には「温故知新」を感じて頂ければ幸いである。


ライブデモ 座長 愛媛大学医学部附属病院 診療支援部 上田 幸介
心臓MRI撮影のポイント(三重大病院からのライブデモ)
三重大学医学部附属病院 中央放射線部 高瀬 伸一 先生
   心臓MRI 検査は、Cine MRI や遅延造影MRIなど複数の「撮像モジュール」を疾患や検査目的に合わせて組み合わせて実施している。今回は、虚血性心疾患の精査に相当する撮像モジュールの組み合わせによる心臓MRI検査をライブ中継にて紹介する。
   会場では最前列に2面のスクリーンが準備され、左スクリーンにはMR検査室風景が4分割で投影され、右スクリーンにはMR装置のモニタ画面が投影された。
   佐久間肇先生、高瀬伸一先生らが12時過ぎから設営を行い、16時から三重大学MR検査室とも音声でコミュニケーションをとりながら、シネ撮像、心筋血流撮像などが次々と行われ、解説や議論を交えながら約90分間のライブが行われた。
   「国内では初めての試み」 (佐久間先生) であったが画像の乱れもなく、まるで三重大学MR検査室にいるかのように心臓MR検査の見学が大勢で可能であった。



特別講演 座長 愛媛大学大学院医学研究科 生体画像応用医学 三木 均
心臓MRI標準化検査法と診断・予後評価における有用性
三重大学医学部附属病院 中央放射線部 病院教授 佐久間 肇 先生
   心臓MRIは心筋壁運動や心筋血流、心筋梗塞後の心筋viabilityなど、虚血性心疾患の機能的診断と組織性状の判定を高い解像度で行える利点を持つ。冠動脈狭窄の診断に関しても、最近のwhole heart coronary MRAは16列MDCTとほぼ同等の診断能を示す。